その設備が出来ているのだよ。
そんなにも鴉片は美味なものなのか? 勿論! しかしそれについては、僕は何事も云うまいと思う。僕が故国へ帰って行かない理由の、その半分はこの国に居れば、鴉片を喫うことが出来るけれど、日本へ帰ったら喫うことが出来ない。――と云うことにあるということだけを、書き記すだけに止めて置こう。
やっと鴉片を煉り終えて、煙斗へ詰めてしまった時、一人の少年が垂布をかかげて、僕の部屋へ入って来た。
僕の部屋と云ったところでこの部屋へは、誰であろうともう一人だけは、自由に入ることが出来るのさ。
で、その少年はこんな場合の、習慣としている挨拶の、
「大人《たいじん》、私もお仲間になります」
こういう意味の挨拶をして、同じ寝台の向こう側に寝、ゆっくりと鴉片を煉り出したものだ。
僕はすっかり驚いてしまった。
と云うのはその少年の顔と四肢とが、――つまり容貌と、姿勢《すがた》とが、余りに整って美しかったからさ。
友よ、全くこの国には、人間界の生き物というより、天界の神童と云ったような、美にして気高い少年が、往々にしてあるのだよ。
勿論同じように素晴らしい天界の天女と云
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