が咲いて散って空に飜えり、旗亭や茶館や画舫などへ、鵞毛のように降りかかる季節、四五月の季節が来ようものなら、わけても日本がなつかしくなるよ。
楊柳の花! 楊柳の花!
友よ、友よ、楊柳の花のよさは、何と云ったらよいだろう!
詩人李白が詠《うた》ったっけ。――
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楊花落尽子規啼《ようかおちつくしてしきなく》。
聞道竜標過五渓《きくならくりゅうひょうごけいをすぐと》。
我寄愁心与明月《われしゅうしんをよせてめいげつにあたう》。
随風直到夜郎西《かぜにしたがってただちにやろうのにしにいたる》。
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詩人王維も詠ったっけ。――
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花外江頭坐不帰《かがいこうとうざしてかえらず》。
水晶宮殿転霏微《すいしょうきゅうでんうたたひび》。
桃花細逐楊花落《とうかこまかにようかをおっておつ》。
黄鳥時兼白鳥飛《こうちょうときにははくちょうをかねてとぶ》。
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が、今は楊柳の花が、僕の心を感傷的にする、そういう季節ではないのだよ。しかし僕の語ろうとする「鴉片を喫む美少年」の物語の、主人公の美少年と逢ったのは、その
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