[#「僕のような生活を生活」に傍点]している者に、そんな招待をするなんて、何て冒険的な女達だろう」――つまりこういう意味なのだ。
 僕のような生活を生活している者? のような生活[#「のような生活」に傍点]とはどんな生活なのか? おそらく君は知りたいだろうね。よろしい云おう、その中《うち》に云おう。
 とにかくこうして当日となり、その日が暮れて夜となり、その夜が更けて深夜となった。桂華徳街の百○参号、そこが僕の家なのだが、果たしてその処へ一挺の轎《かご》が、数人の者によって担い込まれた。
 僕は新しい衫《さん》を着け、そうして新しい袴《こ》を穿いて、懐中に短刀――鎧通《よろいどおし》[#ルビの「よろいどおし」は底本では「ろよいどおし」]さ、兼定《かねさだ》鍛えの業物だ、そいつを呑んで轎に乗った。
(淫婦どもめ、思い知るがいい!)
 こういう心持を持ちながら、轎に乗ったというものさ。
 さて轎は道を走った。その道筋を細描写しても、君には面白くあるまいと思う。で、一切はぶくことにする。
 轎は目的の館へ着いた。
 そこが「加華荘舎」の在場所なのさ。僕は一室に通された。
 ここで僕はこの館の
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