ょっと俗物の所があった。それだけにその名は喧伝されていた。
 時の皇帝は玄宗であった。
「※[#「炎+りっとう」、第3水準1−14−64]中の呉※[#「竹かんむり/均」、第3水準1−89−63]を見たいものだ」
 こんなことを侍臣に洩らした。
 呉※[#「竹かんむり/均」、第3水準1−89−63]の許へ勅使が立った。
 出て行かなければならなかった。
「おい、お前も一緒に行きな」
「うん、よし来た、一緒に行こう」
 李白は早速行くことにした。
 やがて二人は長安へ着いた。
 長安で賀知章《がちしょう》と懇意になった。
 賀知章は李白を一見すると、驚いたようにこう云った。
「君は人間なのか仙人なのか?」
「どうもね、やはり人間らしい」
「仙人が誤って人間になると、君のような風采になるだろう。君は謫《たく》[#ルビの「たく」は底本では「てき」]せられた仙人だよ」
「まあさ、見てくれ、謫仙人の詩を」
 李白は旧稿を取り出して見せた。
 賀知章はすっかり[#「すっかり」に傍点]参ってしまった。
「素晴らしい物を作りゃアがる。こいつちょっと人間業じゃアねえ。君のような人間に出られると、僕の人気な
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