》を伝い、柄頭まで伝わった。と思うとタラタラと、床の上へ流れ落ちた。他でもない血潮であった。ハッと思って見直す、とそんなしみなどはどこにもない。「何んだ馬鹿な!」と思う間もなく、またもや同じしない[#「しない」に傍点]の先へ、ポッツリ真紅のしみが出来、それがタラタラと流れ下った。プンと生臭い匂いがした。とたんにグラグラと眼が廻った。同時に造酒は、「しまった!」と思った。「打たれる! 打たれる! いよいよ打たれる!」
 果然相手の千代千兵衛の眼が面越しに火のように輝いた。と同時に武者顫いがその全身を突き通った。
「今、打たれる! 今、打たれる!」造酒は我知らず眼を閉じた。しかし不思議にも相手のしない[#「しない」に傍点]が、体のどこへも落ちて来ない。彼はカッと眼を開けた。彼と敵とのその間に、一本の鉄扇が突き出されていた。太い指がガッシリと、鉄扇の柄《え》を握っていた。指に生えている細い毛が、幽かに幽かに顫えていた。造酒は鉄扇の持ち主を見た。

    忽ち崩れた金剛の構え

 中肉中|丈《ぜい》で色白く、眉目清秀で四十一、二、頬にも鼻下にも髯のない、一個|瀟洒《しょうしゃ》たる人物が、黒
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