ん」
「当道場の掟として門弟二、三人差し出すによって、まずそれと立ち合って見い」
「へえ、よろしゅうごぜえます。どうぞ精々《せいぜい》強そうなところをお出しなすってくだせえまし」
「秋田|氏《うじ》、お出なさい」
「はっ」というと秋田藤作、不承不承に立ち出でた。相手は阿呆の田舎者である、勝ったところで名誉にならず、負けたらそれこそ面汚《つらよご》しだ。一向|栄《はえ》ない試合だと思うと、ムシャクシャせざるを得なかった。そのうっぷんは必然的に、田舎者の上へ洩らされた。「こん畜生め覚えていろ、厭というほどぶん撲ってやるから」で手早く道具を着けると、しない[#「しない」に傍点]を持って前へ出た。これに反して田舎者は、さも大儀だというように、ノロノロ道具を着けだしたが、恐ろしく長目のしない[#「しない」に傍点]を握ると、ノッソリとばかり前へ出た。双方向かい合ってしないを合わせた。
 礼儀だから仕方がない、「お手柔らかに」と藤作はいった。
「へえ、よろしゅうごぜえます」これが田舎者の挨拶であった。まるで頼まれでもしたようであった。
「よろしゅうござるとは呆れたな。悪くふざけた田舎者じゃねえか。よ
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