日もひどく賑わっていた。奥山を廻って観音堂へ出、階段を上《のぼ》って拝《はい》を済まし、戻ろうとしたその時であった、そこに立っていた虚無僧《こむそう》の話が平八の好奇心を引き付けた。
「小さいご本尊に大きい御堂《みどう》、これには不思議はないとしても、この浅草の観音堂と信州長野の善光寺とは、特にそれが著しいな」こういったのは年嵩《としかさ》の方で、どうやら階級も上らしい。「わしは善光寺は不案内だが、そんなに御堂は大きいかな」年下の虚無僧がきき返した。
「観音堂よりはまだ大きい。一|周《まわ》りももっとも大きいかな」「それは随分大きなものだな」「そうだ、あれは一昨年だった、わしは深夜ただ一人で、その善光寺の廻廊に立って、尺八を吹いたことがある。なんともいえずいい気持ちだった。まるで音色《ねいろ》が異《ちが》って聞こえた」「ナニ尺八のねいろが異った? ふうむ、それは何故だろうな?」「善光寺本堂の天井に、金塊が釣るしてあるからだ」「ナニ金塊が釣るしてある?」「さよう金塊が釣るしてある。つまり火災に遭《あ》った時など、改めて建立しなければならない。その時の費用にするために、随分昔から黄金《きん
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