れた馬方甚三の実の弟、追分産まれの浅間甚内だ! 兄の敵妹の仇、思い知ったかこん畜生め! 口惜しくば立ち上がってかかって来い! どうだどうだ富士甚内!』……敵は身顫いをいたしました。動くことは出来ません。そこで私は止どめとして三本目の釘を投げつけて、咽喉《のど》を貫いたのでございます。それから妹を肩へかけ、帰って参ったのでございます。……聞けばお北もあの家で、首を縊《くく》ったと申すこと。因果応報なのでございましょう。恨みはこれで晴れました。ああいい気持ちでございます。でも寂しゅうございます。一人ぼっちでございますもの。……お手数恐縮ではございますが、どうか私を召し連れて、お上《かみ》へお訴えくださいますよう。人殺しをしたのでございます。兄の敵とはいいながら、武士を殺したのでございます。おしおきになりとうございます」
 周作が甚内を召し連れて、西町奉行[#「西町奉行」はママ]へ訴えたのは、その翌日のことであった。
 そこで奉行は取り調べた。敵討《かたきう》ちに相違なく、それに相手の富士甚内は、辻斬りの張本というところから、甚内はかえって賞美され、なんのお咎めも蒙らなかった。
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