に、追い逼っているではございませんか。ハッと思ったものでございます。と、いうのはその武士が、刀の柄をシッカリと、握っていたからでございます」
光風霽月大団円
「『ははあこいつが噂に高い、辻斬り強盗の張本だな』と、私は突嗟《とっさ》に思いましたが、よい気持ちはいたしませんでした。で、自然と右の手が、懐中へ忍ばせた手裏剣へ、つと走ったものでございます。すると突然妹のお霜が、千切れるような声を上げ、私の袖をグイグイと、三度引くではございませんか! 『うん』と私は呻きました。合図だったからでございます。……富士甚内を目っけたら、三度袖を引くようにと、教え込んで置いたからでございます。素早《すばや》くこいつが敵かと、躍り立った一|刹那《せつな》『亡霊追分、正体見た! 二つになれ!』とその武士が、サッと斬り込んで参りました。その太刀風の物凄さ、なんで私に避けられましょう。真っ二つにされた筈でございます。ワッ、やられた! と叫びながら、足もとを見ると妹のお霜が、真《ま》っ向《こう》から胸板まで、切り割られて仆れておりました。身代りになったのでございます。私をかばう一心から、飛び込んで来た
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