、素晴らしい高鳴りをするのであった。「どうもこいつは解せねえなあ」こう次郎吉は呟いたが、そのまま鼓を膝へ置くと、眉をひそめて考えこんだ。「千代田城の大奥へ、一儲けしようと忍び込み、この鼓を調べたとき、ちょうどこんなような音がしたが、名に負う柳営とあるからは、八百万石の大屋台、腹のドン底へ滲み込むような、滅法な音がしようとも、ちっとも驚くにゃあたらねえが、いかに構えが大きいといっても、たかが個人の別荘から、こんな音色が伝わって来るとは、なんとも合点がいかねえなあ」……じっと思案にふけったが「三度が定《じょう》の例えがある。よし、もう一度調べてみよう。それでも音色に変りがなかったら、十万二十万は愚かのこと、百万にもあまる黄金白金《こがねしろがね》が、あの別荘にあるものと、見究めたところで間違いはねえ。いよいよそうなら忍び込み、奪い取って一|釜《かま》起こし、もうその後は足を洗い、あの米八でも側へ引き付け、大尽《だいじん》ぐらし栄耀栄華、ううん、こいつあ途方もねえ、偉い幸運にぶつかるかもしれねえ。犬も歩けば棒というが、鼠小僧が田舎廻りをして、こんなご馳走にありつこうとは、いや夢にも思わなかっ
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