いかに赤格子が豪傑でも、討ち取るに訳はございません」市之丞は笑《え》ましげに、「それはそうと先生には、どうしてそのような船図面を、お手に入れたのでございますな?」「これか」というと要介は、膝の上へひろげていた例の図面へ、きっと酔眼を落としたが「いやこれは偶然からだ。……実は便船を待ちながら、木更津の海辺をさまよっていると、細身蝋塗りの刀の鞘が、波にゆられて流れ寄ったものだ。何気なく拾い上げて調べてみると、口もとに粘土が詰めてある。ハテナと思って掘り出して見ると、中からこれが出て来たのさ」「それは不思議でございますな」「不思議だといえば全く不思議だ」「では赤格子めが造っているという、素晴らしく大きなご禁制船のたしかな図面ともいえませんな?」「うん、たしかとはいえないな」「しかしそれにしてもそんな図面を、なんで刀の鞘などへ入れ、海へ流したのでございましょう?」「わからないな、トンとわからぬ。しかし、赤格子めを退治てみたら、案外真相がわかるかもしれない。……さあ貴様達酒ばかり飲まずと、景気よく唄でもうたうがいい!」「へえ、よろしゅうございます」海賊どもは手拍子をとり、声を揃えてうたい出した。
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