えたって惜しかあねえ」
「アラそう、それじゃ替えようかしら」
「それがいい、つき替えねえ」
 米八はいくらか愁眉をひらき、チラリと鏡を覗いてから、次郎吉の方へ膝を向けた。
「まだあるのよ、気になることが」
「文句の多い立《たて》おやまさね」次郎吉はちょっとウンザリしたが、「おおせられましょう、お姫様、とこう一つ行くとするか」
「真面目にお聞きよ、心配なんだからね」
「おい、どうするんだ、邪慳《じゃけん》だなあ。煙管《きせる》ならそっちにあるじゃねえか」
「お前さんの煙管でのみたいのさ」
「へん、安手《やすで》な殺し文句だ」
「でも、まんざらでもないでしょうよ」
「こんどは押し売りと来やがったな。あッ、熱い! なにをしやがる!」
 左の頬を抑えたのは、雁首《がんくび》の先をおっつけられたからで。
「いい気味いい気味、セイセイしたよ」
「地震の後はどうせ火事だ。諦めているからどうともしなよ」
 ゴロリと次郎吉はあおむけになった。
「節穴《ふしあな》の多い天井だなあ。暇にまかせて数えてやるか。七ツ八ツ九ツ十」
「莫迦《ばか》にしているよ、呆れもしない」
「そのまた莫迦が恋しくて、離れられない
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