《ひやみず》で、鼓賊を追っかけているんだよ。ところがさすがの名探索も、こんどばかりは荷が勝って、後手ばかり食らっているやつさ。それを俺は知ってるんだ。うん、そうさ、ある理由からな。ところで俺はあの爺《じじい》に五年前から怨みがあるんだ。で、そこで敵討ちよ。つまり彼奴《きゃつ》のトンマぶりを、そっくり芝居に仕組んだあげく、彼奴《きゃつ》の眼の前にブラ下げたって訳さ。胸に堪《こた》える五寸釘! そいつがこれだ。『名人地獄』だ!」
「どんな怨みだか知らないけれど、つまらない事をしたものね」米八は浮かない顔をした。
「それはそうと、ねえお前さん、秀郎さんの鼓賊のつくり、何から何までお前さんじゃないか」
「俺が注文したからよ」次郎吉はそこでニタリとした。
「どうしてだろう? ねえお前さん」
「それも玻璃窓に見せたかったからさ」
「なんだか妾《わたし》にゃあ解らない」きまずそうに眉をひそめ、「とにかく妾にゃあこの芝居は、気になることばかりで面白くないよ」
「それじゃ明日から芸題《げだい》替えだ」次郎吉は煙管《きせる》のホコを払い、「もう玻璃窓に見せたんだから、俺の目的はとげられたってものさ。いつ替
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