ン、おっしゃいよ、おためごかしを」
米八は横目で睨む真似をした。
「そうはいうものの惜しいことをした。あれは俺から五|渡亭《とてい》に頼んで、わざわざ描かせた看板だからな」
「そんなことどうでもよござんすよ」まだ米八は機嫌が悪い。「それに妾にはこの芝居、なんだか小気味が悪くってね」
「へえ、どうしてだい、おかしいね。いり[#「いり」に傍点]だってこんなにあるじゃないか」今度は次郎吉が不満そうにした。
「だって、あんまりなまなましいんですもの」
「なまなましいって? どうしてかい?」
「だってお前さんそうじゃないか。泥棒芝居の鼓賊伝、ところで主人公の鼓賊ときては、現在江戸を荒し廻っていて、お上に迷惑をかけてるんでしょう」
「うん、そうさ、だからいいのさ。つまり何んだ、はしりだからな。そうとも素敵もねえ際物《きわもの》だからな。……もっとも他にも筋はある」
「ええ、そりゃありますとも。追分唄いの甚三馬子だの、宿場女郎のお北だの、あくどい色悪《いろあく》の富士甚内だの。……」
「それから肝腎の探索がいらあ」
「ええ、見透しの平七老人」
「で、素晴らしくいい芝居さ」次郎吉はツルリと顎《あご》
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