ている筈だ。妹を江戸へ連れて来て、一緒に市中を廻ったら、よい手引きになろうもしれぬ」

    復讐の念いよいよ堅し

 そこで周作に暇を乞い、故郷の追分へ帰ることにした。
 この頃お霜は油屋にいた。
 一人の兄は非業《ひごう》に死し、もう一人の兄は他国へ行き、二、三親類はあるとはいえ、その日ぐらしの貧乏人で、片輪のお霜を引き取って、世話をしようという者はない。で甚三が殺されてからの、お霜の身の上というものは、まことに憐れなものであったが、捨てる神あれば助ける神ありで、油屋本陣の女中頭、剽軽者《ひょうきんもの》の例のお杉が、気の毒がって手もとへ引き取り、台所などを手伝わせて、可愛がって養ったので、かつえ[#「かつえ」に傍点]て死ぬというような、そんな境遇にはいなかったが、さりとて楽しい境遇でもなかった。自分はといえば唖者《おし》であった。周囲といえば他人ばかり、泣く日の方が多かった。自然兄弟を恋い慕った。
 そこへ甚内が現われたのであった。
 お霜の喜びも大きかったが、お杉もホッと安心した。
「おお甚内さん、よう戻られたな。お前さんの兄さんの甚三さんは、お前さんと同じ名の富士甚内に、む
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