。ちょっと持っても持ち重りがする。しかし形や寸法は、何ら五寸釘と異《かわ》りがない。で幾十本持っていようと、官に咎められる気遣いはない。これ北辰一刀流手裏剣用の五寸釘だ」

    急拵えの大道芸人

 周作は優しく微笑した。
「どうだ甚内、この五寸釘を、練磨体得する所存はないか」
「なんのないことがございましょう。習いたいものでございます」勇気を含んで甚内はいった。
「おお習うか、それは結構。この一流に秀でさえしたら、敵《かたき》に逢ってもおくれは取るまい。なまじ剣術など習うより、これに専念をした方がいい」「そういうことに致します」「実はな、俺は案じていたのだ。剣術槍術弓薙刀、一流に達していたところで、一撃で相手を斃すことは出来ない。例えば鎌倉権五郎だ、十三|束《ぞく》三|伏《ぶせ》の矢を、三人張りで射出され、それで片目射潰されても、なお堂々と敵を斬り、生命には何んの別状もなかった。剣豪塚原卜伝でさえ、一刀では相手を殺し兼ねたという。まして獲物が五寸釘とあっては、機先を制して投げつけて、精々《せいぜい》相手を追い散らすぐらいが、関の山であろうと思っていた。ところがお前の精鋭極まる、ツ
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