はお前と別れようと思う」浪人は憎々《にくにく》しくやがていった。「くらしが変れば心持ちも変る。……俺は成りたいのだ、明るい人間にな」
女は肩をすくませた。
「それがあなたに出来ましたら……」
「別れられないとでも思うのか」
「あなたも妾も二人ながら、のろわれている身ではございませんか。二人一所におってさえ、毎日毎夜恐ろしいのに。……それがあなたに出来ましたら」
夜がふけるにしたがって、隣家の騒ぎもしずまった。笑い声もきこえない。
ボーンと鐘が鳴り出した。諸行無常の後夜《ごや》の鐘だ。
「酒はないか?」と浪人はいった。
「なんの酒などございましょう」
きまずい沈黙が長くつづいた。耳を澄ませば按摩の笛。それに続いて夜鍋うどんの声……。
「こんな晩には寝た方がよい。ああせめてよい夢でも。……」
枕にはついたが眠れない。
犬の遠吠え、夜烏の啼《な》く音《ね》、ギーギーと櫓を漕ぐ音。……隅田川を上るのでもあろう。
寂しいなアと思ったとたん、
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西は追分東は関所……
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追分の唄が聞こえて来た。
「あッ」
というと二人ながら、ガバと夜具
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