やることなすこと食い違い……」
なお女房は祈っていた。
やがてそろそろと立ち上がると、おっと[#「おっと」に傍点]の側へ膝をついた。
そうして何かを聞き澄まそうとした。しかし何んにも聞こえない。
「ああ」と襟を掻き合わせたが、「まだ今夜は聞こえて来ない。どうぞ聞こえて来ないように」
チェッと浪人は舌打ちをした。
「毎晩きこえてたまるものか。なんの毎晩きこえるものか」
「毎晩きこえるではございませんか。ゆうべも、おとついも、その前の晩も。……」
「あれは……あれはな……空耳だ」
「なんの空耳でございましょう。あなたにも聞こえたではございませんか」
二人は顔をそむけ合った。
「……あれはな、亡魂の声ではない。……たしかに人間の声だった」
しかし女房は首を振った。
「あの人の声でございました。何んの妾《わたし》が聞き違いましょう。……」
近くに古沼でもあるとみえて、ギャーッと五位鷺《ごいさぎ》の啼く声がした。
と、それと合奏するように、シャーッ、シャーッという狐の声が、物さびしい夜を物さびしくした。ホイホイホイ、ホイホイホイ、墨堤《つつみ》を走る駕籠であった。
二人はもはや
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