。と、全く意外なことが、彼の帰りを待ちかまえていた。
碩翁様からの使者であった。
「はてな?」
と彼は首を傾《かし》げた。
役付いていた昔から、碩翁様には一方ならず、彼は恩顧を蒙っていた。役目を引いた今日でも、二人は仲のよい碁敵《ごがたき》であった。
「わざわざのお使者とは不思議だな」
怪しみながら衣服を改め、使者に伴われて出かけて行った。
彼が自宅へ帰ったのは、夜もずっと更けてからであったが、彼はなんとなくニコツイていた。ひどく顔にも活気があった。
彼は家の者へこんなことをいった。
「俺はあすから旅へ出るよ。鼓賊なんか七里けっぱい[#「けっぱい」に傍点]だ。もっともっと大きな仕事が、この俺を待っているのだからな。」
南無幽霊頓証菩提
隅田のほとり、小梅の里。……
十一月の終り頃。弱々しい夕陽が射していた。
竹藪でしずれる[#「しずれる」に傍点]雪の音、近くで聞こえる読経の声、近所に庵室《あんしつ》でもあるらしい。
古ぼけた百姓家。間数といっても二間しかない。一つの部屋に炉が切ってあった。
雪を冠った竹の垣、みすぼらしい浪人のかり住居。……
美男の
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