こう目星が外れては、俺もねっから[#「ねっから」に傍点]値打ちがないよ」
「実はね、旦那。その事について、よい耳をお聞かせにあがったんで」小松屋松五郎は膝を進めた。
「ふうん、そうかい、そいつは有難いね」
「旦那、目星がつきましたよ。切り髪女の目星がね」
「ほほう、そいつは耳よりだな」平八の顔は輝いた。「で、もちろん小屋者だろうな?」
「へい、両国の女役者で」
「そいつは少し変じゃないか。両国橋の小屋者なら、とうに悉皆《しっかい》洗ってしまった筈だ」
「ところが最近別の一座が、新規に掛かったのでございますよ」
「ううむ、そうか、そいつは知らなかった」
「旦那としてはちょっと迂濶《うかつ》だ」
「まさに迂濶だ、一言もない。それというのもこの事件では、気を腐らせていたからさ。……ひとつ詳しく話してくれ」
「ところが旦那、詳しいところは、まだわかっていませんので。実はこうなのでございますよ。……それもきのうのひるすぎですが、ちょっと野暮用がありましてね、両国を通ったと覚し召せ。ふと眼についた看板がある。わっち[#「わっち」に傍点]はおや[#「おや」に傍点]と思いやした。その芸題《げだい》が面
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