するとまたもや同じ声がした。
「待っていたよ、はいるがいい」
度胆を抜かれた銀之丞は、今度は極度の好奇心に、追い立てられざるを得なかった。
彼は大胆にはいって行った。三十歩あまりもあるいた時、「ここだ!」という声が聞こえて来た。それは廊下の横からであった。見るとそこに開いた扉《と》があった。で、内《なか》へはいって行った。カッと明るい燈火《ともしび》の光が、真っ先に彼の眼を奪った。そのつぎに見えたのは一人の老人で、部屋の奥の方に腰かけていた。
「オイ若いの、戸を締めな」その老人はこういった。
いわれるままに戸を閉じた。それから老人を観察した。身長《たけ》が非常に高かった。五尺七、八寸はあるらしい。肉付きもよく肥えてもいた。皮膚の色は銅色《あかがねいろ》でそれがいかにも健康らしかった。ただし頭髪《かみのけ》は真っ白で、ちょうど盛りの卯の花のようで、それを髷《まげ》に取り上げていた。銀《しろがね》のように輝くのは、明るい燈火《ともしび》の作用であろう。高い広い理智的な額、眼窩《がんか》が深く落ち込んでいるため、蔭影《かげ》を作っている鋭い眼……それは人間の眼というより、鋼鉄細工とでも
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