、ちんと澄ました姿より、よっぽど可愛く見えるからな」
「おやまたかい。また惚気《のろけ》かい」
「どれ、そろそろ帰ろうかな、お品の顔でも見に帰るか」
「変な野郎だ。どう考えても変だ」
 観世銀之丞と丑松とはこんな塩梅《あんばい》に親しくなった。

「銀之丞さま、銀之丞さま!」
 お品が往来で呼んでいた。
「オイ何んだい、お品さん」
「出てごらんなさいよ、通りますよ」
 そこで銀之丞は離れ座敷から、往来の方へ出て行った。
 お品や、お品の両親や、近所の人達が道側《みちばた》に立って、南の方を眺めていた。
 とそっちから行列が、だんだんこっちへ近寄って来た。馬が五頭駕籠が十挺、それから小荷駄を背に負った、十数人の人夫達で、外ならぬ「別荘」の家族連であった。今|移転《ひっこ》して来たのであろう。
「ねえ、随分大勢じゃないか」「そうさね、随分大勢だね」「荷物だって沢山じゃないか」「そうさ随分沢山だなあ」「どんな人達だか見たいものだね」「お生憎様《あいにくさま》、駕籠が閉じている」「これでマア別荘も賑やかになるね」「化物屋敷でなくなるわけさ」「それにしても妙だったね。十年このかたあの別荘には主人
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