だされ」とたんに老武士が声を掛けた。
 すると、みすぼらしい侍は、そのまま静かに足をとめたが、「何かご用でござるかな?」
「用と申すではござらぬが、物騒のおりからかかる深夜に、どこへお越しなされるな?」
「これはこれは異なお尋ね、深夜にあるくが不審なら、なぜそこもともおあるきなさる」みすぼらしい侍はしっぺ返したが、これはいかにももっともであった。
「いやナニそのように仰せられては、角が立って変なもの、とがめ立てしたが悪いとなら、拙者幾重にもおわび致す」老武士は言葉を改めた。

    流名取り上げ破門の宣言《せんこく》[#「宣言《せんこく》」はママ]

「ナニ、それほどの事でもない」みすぼらしい侍は笑ったが、「実をいえばお言葉通り、世間物騒のおりからといい、かような深夜の一人歩きは、好ましいことではござらぬが、実は拙者は余儀ない理由で、物を尋ねているのでな」
「ははあさようでござるかな。して何をお尋ねかな?」
「ちと変った尋ねものでござる」
「お差し支えなくばお明かしを」
「いやそれはなりませぬ」
「さようでござるかな、やむを得ませぬ。……実はな、拙者もそこもとと同じく、物を尋ねておる
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