がしかった境内が一時に森然《しん》と静かになった。群集は左右に身を開いてその行列を迎え入れた。行列は粛々と歩いて行く。神殿の前で立ち止まる。ギーと神殿の戸が開く。と、杉右衛門と桐五郎とがシズシズと階段《きざはし》を上って行く。
桐五郎の持っている松明が、内陣の奥でチラチラと火花を散らして燃えているのが神秘めいて厳かである。
ギーとまたも軋《きし》り音《ね》がした。
群集はにわかに緊張した。神聖の幕屋がひらかれたからだ。群集の眼は一斉に内陣の奥へ注がれた。突然《いきなり》叫び声が響いて来た。内陣の奥から響いたのである。ザワザワと群集はざわめき[#「ざわめき」に傍点]出した。
その群集の眼前へ杉右衛門と桐五郎とが飛び出して来た。
「恐ろしい事じゃ! 勿体《もったい》ない事じゃ!」
杉右衛門が、嗄声《しゃがれごえ》で叫んだものである。
「宗介天狗は裸身《はだかみ》でござる!」
桐五郎が続いて叫んだ。二人ながらガタガタ顫《ふる》えている。そしてその顔は蒼白《まっさお》である。
群集は一刹那《いっせつな》静かであった。思いもよらない出来事のために物を云うことさえ出来なかったのだ。
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