やがて真夏がおとずれて来た。
笹の平の窩人達は祭りの用意に忙しかった。
宗介天狗《むねすけてんぐ》の祭礼《まつり》なのである。
これは毎年の慣例《しきたり》で七月十五日の早朝《あさまだき》にご神体の幕屋《まくや》がひらかれるのである。そうして黄金の甲冑《かっちゅう》で体を鎧《よろ》った宗介様を一同謹んで拝するのであった。
窩人達は元気よく各自《めいめい》の仕事にいそしんでいた。旗を作る者、幟《のぼり》を修繕《なお》す者、提灯《ちょうちん》を張る者、幕を拵《こしら》える者――笑い声、話し声、唄う声が部落中から聞こえていた。
やがて祭りの当日が来た。
天狗の宮の境内は旗や幟で飾られた。盛装を凝らした窩人達は夜のうちから詰めかけて来て、暁《あけ》の明星の消えた頃には境内は人で埋ずもれた。その時一群の行列が粛々《しゅくしゅく》と境内へ練り込んで来た。神事を執行《とりおこな》う人達で、先頭には杉右衛門が立っている。跣足《はだし》、乱髪、白の行衣《ぎょうえ》、手に三方《さんぼう》を捧げている。後につづいたは副頭領で岩太郎の父の桐五郎であった。手に松明《たいまつ》を持っている。
騒
前へ
次へ
全368ページ中83ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング