ける。朝の日光《ひかり》が射して来た。で、彼女は小屋を出て雪の高原を彷徨《さまよ》いながら狂人《きちがい》のように探してみたが結果は昨日と同じであった。で、また寂しい夜となる。……
夜が日に次ぎ日が夜につづき、恐怖、不安、疑惑、憤怒、嫉妬の月日が経って行った。
春がおとずれ初夏が来た。山の雪はおおかた消え欝々《うつうつ》たる緑が峰に谷に陽に輝きながら萌えるようになった。辛夷《こぶし》、卯の花が木《こ》の間《ま》に見え山桜の花が咲くようになった。鶯《うぐいす》の声、駒鳥《こまどり》の声が藪《やぶ》の中から聞こえて来る。
山吹はこの頃|懐妊《みごも》っていた。多四郎の種を宿していたのだ。
彼女はようやくこの頃になって、自分が多四郎に捨てられたことをはっきり[#「はっきり」に傍点]心に悟るようになった。
「復讐!」――と彼女は心に誓った。あたかも執着《しゅうじゃく》そのもののような窩人の娘の復讐がいかに物凄いかということを薄情な男に思い知らせてやろう! こう決心したのであった。
「でも子供には罪はない、何も彼も子供が産まれてからだ」
で、彼女は小屋の中で産み落とす日を待っていた。
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