いどうしたんだろう? やけ[#「やけ」に傍点]に部落では騒いでるじゃねえか」
権九郎はちょいと[#「ちょいと」に傍点]耳を傾《かし》げた。
「そうさ。馬鹿に賑やかだの。宴会でも開いているのだろうよ」ニヤニヤ笑いながら多四郎は云う。「計画いよいよ図に当たりかね」
「え、何んだって? 計画だって? 定《きま》り文句を云ってるぜ、お前の計画も久しいもんだからの」
「まあサ権九、そうは云わねえものだ。大きな仕事をしようとするには長い用意がいるからの」
「そいつア俺にも解っているが、さてその計画というやつがな、どうも俺には呑み込めねえ。たかが城下の味噌や米をこの俺《おい》らに中継ぎさせて、部落の奴らへ売り込んで高い分銭《ぶせん》を儲《もう》けるにしてもあぶく[#「あぶく」に傍点]儲けというほどでもねえ」
「こうこう権九、拝むぜ拝むぜ。蚊の涙にも足りねえようなそれっぱかりの儲けを目当にこんな小屋まで造ると思うか。俺ののぞみはもっと[#「もっと」に傍点]大きい」
「豪勢強気に出やがったな。こいつア大きに話せるわえ。それじゃ頼む聞かせてくんな。お前の計画っていうやつをな」
「うふ、とうとう降参か、智
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