頭巾、何か物でも考えているのか、俯向《うつむ》きかげんに肩を落とし、シトシトとこっちへ歩いて来た。
 と、双方行き違おうとした。
 不意に武士は顔を上げた。
 つづいて右手《めて》が刀の柄へ、……ピカリと光ったのは抜いたのであろう。「キャッ」という悲鳴。「ワーッ」と叫ぶ声。つづいて再び「キャッ」という悲鳴。……地に転がった提灯が、ボッと燃え上がって明るい中に、斃れているのは二つの死骸。……斬り手の武士は数間の彼方《あなた》を、影のようにションボリと歩いていた。
 他ならぬ鏡葉之助であった。
 浅草の観世音、その境内の早朝《あさまだき》、茶店の表戸は鎖《と》ざされていたが、人の歩く足音はした。朝詣《あさまい》りをする信者でもあろう。
 一本の公孫樹《いちょう》の太い幹に、背をもたせ[#「もたせ」に傍点]かけて立っているのは、編笠姿《あみがさすがた》の武士であった。
 一人の女がその前を、御堂《みどう》の方へ小走って行った。
 武士がヒョロヒョロと前へ出た。居合い腰になった一瞬間、日の出ない灰色の空を切り、紫立って光る物があった。とたんに「キャッ」という女の悲鳴。首のない女の死骸が一つ、前
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