穴居時代などに、作られたところの穴かも知れない。
だがマアそれはどうでもよかろう。
さて鏡葉之助は、それからどんな生活をしたか?
「いつまでも年を取らないだろう。……永久安穏はあるまいぞよ」
水狐族の長《おさ》久田の姥《うば》が、末期に臨んで呪った言葉――この通りの生活が、葉之助の身には繰り返された。
彼はいつまでも若かった。心がいつも不安であった。
今日の言葉で説明すれば、強迫観念とでも云うのであろう。絶えず何者かに駈り立てられていた。
そうしてかつて高遠城下で、夜な夜な辻斬りをしたように、またもや彼は江戸の市中を、血刀を提げて毎夜毎夜、彷徨《さまよ》わなければならないようになった。
八山下《やつやました》の夜が更《ふ》けて、品川の海の浪も静まり、高輪《たかなわ》一帯の大名屋敷に、灯火一つまばたいてもいず、遠くで吠える犬の声や、手近で鳴らす拍子木の音が、夜の深さを思わせる頃、急ぎの用の旅人でもあろう、小田原提灯《おだわらぢょうちん》で道を照らし、二人連れでスタスタと、東海道の方へ歩いて行った。
と、木陰から人影が出た。
無紋の黒の着流しに、お誂《あつら》い通りの覆面
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