の中へ、俺に知らせずに担ぎ込んだのだろう? ……人に担がれても知らないほど、眠っていたとは呆れ返るな……とにかく屋敷の様子を見よう」
 葉之助は立ち上がった。
 まず正面へ歩いて行った。そこには正しく床の間があった。ズッと右手へ歩いて行った。と、手先に襖がさわった。それをソロソロと引き開けた。出た所に廊下があった。その廊下を左手へ進んだ。幾個かの部屋が並んでいた。と、丁字形の廊下となった。網を掛けた雪洞《ぼんぼり》があった。
「大名か旗本の下屋敷だな」
 葉之助は直覚した。
 廊下の行き詰まりに庭があった。で、庭へ下りて行った。植え込みが隙間なく植えてあった。それを潜って忍びやかに歩いた。
 深夜と見えて人気がなかった。時々|鼾《いびき》の声がした。
 黒板塀がかかっていた。その根もとに蹲《うずく》まり、二人の人間が囁き合っていた。
 葉之助は素早く身を隠した。二人の話を聞こうとした。
 間が遠くて聞こえなかった。で、植え込みの間を潜り、ソロソロと二人へ近寄った。月が二人の真上にあった。二人の姿は朦朧《もうろう》と見えた。二人ながら覆面《ふくめん》をし、目立たない衣裳を纏《まと》ってい
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