たいのさ」
 黄袋の口を檻の上へ傾《かし》げた。粉薬をサラサラと檻の中へこぼし[#「こぼし」に傍点]た。だが全部《みんな》はこぼさ[#「こぼさ」に傍点]なかった。半分がところで止めてしまった。
 粉薬が六匹の蛇へかかった。蛇は一斉に鎌首を上げた。プーッと頬を膨《ふく》らせた。全身をウネウネと蜒《うね》らせた。真っ直ぐに体を押っ立てた。長い蝋燭《ろうそく》が立ったようであった。俄然六匹は食い合いを始めた。
 ゾッとするような光景であった。
 まず一匹が咽喉《のど》を咬まれた。白い体が血にまみれ[#「まみれ」に傍点]た。と、グンニャリと倒れてしまった。長く延びて動かなくなった。死骸の上をのたくり[#「のたくり」に傍点]ながら、五匹の蛇は格闘をつづけた。また二匹目が食い殺された。つづいて三匹目が食い殺された。尚三匹は戦っていた。だが次々に死んで行った。最後の一匹も死んでしまった。
 若者は拳を握りしめていた。
 北山は気味悪く微笑した。
「まずこれで安心した……悪人の媒介《ばいかい》も根絶やしになった……そうして薬の利き目も解った……それじゃあご免よ。私は帰る」
 黄袋を懐中《ふところ》へ押
前へ 次へ
全368ページ中349ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング