わけ」に傍点]がなかったが、だがそいつはよくないことだ! あいつらは種族の共同の敵だ! だから皆んなしてやっつけなけりゃあならねえ。掛け小屋へ帰って武器を取れ! そうして一緒に押し出そう」
 窩人達はバラバラと小屋の方へ走った。
 現われた時には武器を持っていた。
 長の杉右衛門を真ん中に包み、副将岩太郎を先頭に立て、一団となって走り出した。
 彼らは声を立てなかった。足音をさえ立てまいとした。妨害されるのを恐れたからであった。
 境内を出ると馬道であった。それを突っ切って仲町へ出た。田原町の方へ突進した。清島町、稲荷町、車坂を抜けて山下へ出、黒門町から広小路、こうして神田の大通りへ出た。
 神田辺りはやや騒がしく、町人達は門へ出て、芝の大火を眺めていた。
 その前を逞《たくま》しい男ばかりの、五十人の大勢が、丸く塊まって通り抜けた。刀や槍を持っていた。
 町の人達は仰天した。だが遮《さえぎ》ろうとはしなかった。その威勢に恐れたからであった。
 芝の火事は大きくなったと見え、火の手が町の屋根越しに、天を焼いて真っ赤に見えた。
 窩人の一団は走って行った。室町を経て日本橋を通って京橋へ出
前へ 次へ
全368ページ中330ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング