み、体に精力が甦《よみがえ》って来た。一刀流の養生《ようじょう》法、陣中に用いる「阿珂術《あかじゅつ》」であった。
 もしもこの時葉之助が、バッタリ地の上に倒れるか、ないしは胡座《こざ》して大息を吐いたら、そのまま気絶したに相違ない。彼は十分働き過ぎていた。気息も筋肉も疲労《つか》れ切っていた。一点の弛《ゆる》みは全身の弛みで、一時に疲労《つかれ》が迸《ほとばし》り出て、そのまま斃れてしまったろう。
 今日|流行《はや》っている静座法なども、その濫觴《らんしょう》は「阿珂術」なので、伊藤一刀斎景久は、そういう意味からも偉大だと云える。
 気力全身に満ちた時、彼は刀を持ちかえようとした。さすがに腕にはシコリが来て、指を開くことが出来なかった。で、左手《ゆんで》で右手《めて》の指を、一本一本|解《と》いて行った。と、切っ先から柄頭《つかがしら》まで、ベッタリ血汐で濡れていた。
「息の音を止めたは八人でもあろうか。傷《て》を負わせたは二十人はあろう」
 彼は刃こぼれ[#「こぼれ」に傍点]を見ようとした。グイと切っ先を眼前《めのまえ》へ引き寄せ、一寸一寸送り込み、じいいっ[#「じいいっ」に傍点
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