、とりわけ触れようとひしめいた。
男の教主の怪しき得物《えもの》と、女の教主の檜扇とは、そういう信者の一人一人へ、一々軽く触れて行った。
こうして行列は静々と、広い部屋を迂廻した。
そうして葉之助へ近付いて来た。
葉之助は茫然《ぼんやり》と立っていた。
どうしてよいか解らなかった。もちろん彼は邪教徒ではなかった。で、教主を拝することは、良心に咎《とが》めて出来なかった。と云って茫然《ぼんやり》立っていたら、咎められるに相違なかった。そうなったら事件が起こるだろう。信者でもない赤の他人が、道場へ入り込んでいたとすれば、教団にとっては打撃でなければならない。きっと憤慨するだろう。恐らく乱暴をするかもしれない。道場にいる全部の信徒が、刃向かって来ないとも限らない。
「いったいどうしたらいいだろう?」
焦心せざるを得なかった、狼狽《ろうばい》せざるを得なかった。
その間も行列は進んで来た。
しかしてやがて葉之助の前へ二人の教主は立ち止まった。
葉之助は絶体絶命となった。で、昂然《こうぜん》と顔を上げ、教主の顔を睨み付けた。
二人の教主の胸の辺に、不思議な刺繍《ぬいとり》が施
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