ちゅう》を、奪い返そうためであった。
 漂泊《さすらい》の旅は長かった。
 到る所で迫害された。
 山男! こういう悪罵《あくば》を投げつけられた。
 長い漂泊の間には、死ぬ者もあれば逃げるものもあった。しかし、子を産む女もあった。
 で、絶えず変化した。
 しかし目的は一つであった。
 復讐をするということであった。
 丘の近くに池があった。パタパタと水鳥の羽音がした。
「水鳥だな」
 と誰かが云った。それは若々しい声であった。
「鳥はいいな。羽根がある」
 もう一つの若々しい声が云った。
「飛んで行きたいよ。高い山へ!」「飛んで行きたいよ深い森へ!」「信州の山へ! 八ヶ嶽へ!」「そうだ俺らの古巣へな」
 三、四人の声がこう云った。
 愉快そうな笑い声が聞こえて来た。
 枯草の匂いが立ち迷った。
 で、またひとしきり[#「ひとしきり」に傍点]静かになった。
 都会《まち》の方から笛の音がした。按摩《あんま》の流す笛であった。
 観音堂は闇を抜いて、星空にまで届いている。と、鰐口《わにぐち》の音がした。参詣する人があるのだろう。
「また白蛇を盗まれたそうで」
 突然こういう声がした。

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