と自由だったあの時代! 俺は夢にさえ思い出す」
「漂泊《さすらい》の旅の二十年! 早く故郷へ帰りたいものだ」
「星が飛んだ!」
とまた誰かが云った。
虫の声が鳴きつづけた。
夜烏《よがらす》がひとしきり[#「ひとしきり」に傍点]梢で騒いだ。おおかた夢でも見たのだろう。
窩人達は眠ろうとした。
しかし彼らは眠られないらしい。
そこで彼らは話し出した。
彼らは浅草奥山の、見世物小屋の太夫達であった。
「八ヶ嶽の山男」
――こういう看板を上げている、その掛け小屋の太夫達であった。
しかし彼らは窩人であった。
彼らは小屋内に眠るより、戸外《そと》で寝る方を愛していた。それは彼らが自然児だからで、人工の屋根で雨露をしのぎ[#「しのぎ」に傍点]、あたたかい蒲団《ふとん》にくるまるより、天工自然の空の下《もと》で、湿気と草の香に包まれながら地上で眠る方が健康にもよかった。で、暴風雨でない限り、いつも彼らは土の上で眠った。
二十年近い過去となった。その頃彼らは八ヶ嶽を出て、下界の塵寰《じんかん》へ下りて来た。それは盗まれた彼らの宝――宗介天狗のご神体に着せた、黄金細工の甲冑《かっ
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