助は返辞をした。
「どなたでござるな。え、どなたで?」
「一学でござる。前田一学で」
「おっ」と葉之助はそれを聞くと、助かったような気持ちがした。「さようでござるか、前田氏でござるか。……それにしてもこれはどうしたことで」
「生き埋めにされたのでございますよ」
「生き埋め? 生き埋め? なんのために?」
「枯れかけた茴香《ういきょう》を助けるために」
「ナニ、茴香を? 枯れかけた茴香を?」
「さよう」と一学の声が云った。「肥料にされたのでございます。……あなた[#「あなた」に傍点]ばかりではございません。十数人の人間が。……人が来るようでございます。……しばらくお待ちくださいますよう」
六
そこでしばらく話が絶え、後はしばらく寂然《しん》となった。
と、また話し声が聞こえて来た。
「葉之助殿、お苦しいかな?」
「苦しゅうござる。早く出してくだされ」
「それが、そうは出来ませんので」
「ナニ出来ない? なぜでござるな?」
「まだ人達が目覚めております」
「ではいつここから出られるので?」葉之助はジリジリした。
「間もなく寝静まるでございましょう、もう少々お待ちく
前へ
次へ
全368ページ中272ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング