だされ」
「それにしても前田氏には、どうしてこんな処におられるな」
「玄卿の秘密を発《あば》くため、飯焚《めした》きとなって住み込んだのでござる」
「で、秘密はわかりましたかな?」
「さよう、おおかたはわかりました」
「それでは白粉の性質も?」
「さよう、おおかたは突き止めてござる」
「さようでござるかそれはお手柄。で、いったい何んでござるな?」
「茴香《ういきょう》から製した薬品でござる」
「ううむ、なるほど、茴香のな。やはり毒薬でござろうな?」
「さよう、さよう、毒薬でござる」
「おおそれでは金一郎様には、毒殺されたのでございますな」
「ところが、そうではございません」
「そうではないとな? これは不思議?」
「茴香剤は毒薬とは云え、後に痕跡を残します。……しかるに若殿の死骸《なきがら》には、なんの痕跡もなかったそうで」
「さようさよう、痕跡がなかった。……だが、毒殺でないとすると……」
「全く不思議でございます」
「白粉の性質が解っても、それでは一向仕方がないな」
「だが前後の事情から見て、茴香剤の白粉が、金一郎様殺害に、関係のあることはたしかにございます」
「で、白粉の特性は?
前へ 次へ
全368ページ中273ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
国枝 史郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング