引き入れられるように、ブラブラと内へはいって行った。
間もなく彼の叫び声がした。
「やあ綺麗な花園だなあ」
それから後は寂然《しん》となった。
そうして源介はその夜限り、この地上から消えてしまった。彼の姿は未来|永劫《えいごう》、ふたたび人の眼に触れなかった。
「やあ綺麗な花園だなあ」
この彼の叫び声はいったいどういう意味なのであろう?
三
ここで再び物語は、鏡葉之助の身の上に返る。
ある日葉之助はいつものように、四国町の邸を出て、殿の下屋敷を警護するため、根岸の方へ歩いて行った。増上寺附近まで来た時であったが、「ヒーッ」という女の悲鳴がした。同時に山門の暗い蔭から、裾を乱した若い女が、彼の方へ走って来た。そうしてその後から二人の男が何か喚《わめ》きながら走って来たが、葉之助の姿を見て取ると元来た方へ引っ返した。
「ははあ、さては狼藉者《ろうぜきもの》だな」
呟いたとたんに若い女は犇《ひし》と葉之助へ縋り付いた。衣裳も髪も乱れてはいたが、薄月の光に隙《す》かして見ると、並々ならぬ美しさをその女は持っていた。
「お助けくださりませ、お助けくださりませ!
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