]毒薬らしい。もっとも森家と内藤家とは相当距離がへだたっているのに、その二軒の屋敷を繋いでこの白粉が一直線に、地面に撒《ま》かれてあったということから、ちと毒薬にしては変なところもある。うん、どうもこれは少し変だ。毒薬を地面へふり[#「ふり」に傍点]撒いたところで人の命は取られるものでない。が、どっちみちこの白粉が怪しいものには相違ない。そうしてお前さんの手紙によると、この白粉の筋道に添って、ちょうど美妙《びみょう》な笛のような音が聞こえて来たということであるが、それは今のところ解らない。だがしかしそれらのことも白粉の性質さえ解ったなら、自《おのずか》ら明瞭になるだろう。とまれこういう不思議な白粉を、造り出すことの出来る者は、大槻玄卿以外には、少くも江戸にはない筈だ。と云うことであって見れば、何をおいても玄卿の家へ、人を入れて様子を探らせ、薬局を調べる必要がある。ところで私と玄卿とは同業であり顔見知りだ。だから到底住み込むことは出来ない。幸い一学は玄卿とはこれまで一面の識もない。そこで一学を住み込ませ、至急様子を探らせようと思う。グズグズしてはいられない、うっかりノホホンでいようものな
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