むべき恐ろしいペテンから、湧き起こった事でございまして、一口に云うと私の娘が、多四郎という下界の人間にかどわかさ[#「かどわかさ」に傍点]れたのでございます。それのみならず、その人間は私どもが尊敬する宗介天狗のご神体から黄金《こがね》の甲冑《かっちゅう》を奪い取り、私どもをして神の怒りに触れしめたのでございます。そのため私達は山を下り、厭《いや》な下界を流浪し歩き、こんな香具師《やし》のような真似までして、厭な下界人の機嫌を取り、生活《くら》して行かなければならないという、憐れはかない身の上に成り下ってしまったのでございます」
「態《ざま》あ見ろ! いい気味だ!」
また群集は湧き立った。
「しかし」と杉右衛門は手で抑え、「しかし、憎むべき多四郎の、盛んであった運命も、いよいよ尽きる時が参りました。しかも彼は我が子によって命を断たれるのでございます。因果応報天罰|覿面《てきめん》、恐ろしいかな! 恐ろしいかな! で、復讐をとげると同時に、私どもは下界を棄《す》て、再び魔人の住む所、八ヶ嶽山上へ取って返し、平和と自由の生活を、送るつもりでございます。自然下界の皆様方とも、お別れしなければ
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