人へ云った。
「そいつで俺《おい》らも落胆《がっかり》したやつさ。あたりめえ[#「あたりめえ」に傍点]の人間じゃねえか。俺ら、山男というからにゃ、頭の髪が足まで垂れ、身長《せい》の高さが八尺もあって、鳴く声|鵺《ぬえ》に似たりという、そういう奴だと思ってたんだが、篦棒《べらぼう》な話さ、ただの人間だあ」
「そうは云ってもまんざら[#「まんざら」に傍点]じゃねえぜ」もう一人の仲間が口を出した。「間口五間の舞台の端から向こうの端へ一足飛び、あの素晴らしい身の軽さは、どうしてどうして人間|業《わざ》じゃねえ」
「あいつにゃ俺《おい》らも喫驚《びっく》りした。こう全然《まるで》猿猴《えてこう》だったからな」
「そう云えば長さ三間もある恐ろしいような蟒《うわばみ》を、細工物のように扱った、あの腕だって大したものさ」
「それに武術も出来ると見えて、棒を上手に使ったがあれだって常人にゃ出来やしねえ」
「だがな、眼があって耳があって鼻があって口があって、どうでもあたりめえ[#「あたりめえ」に傍点]の人間だあ、化物でねえから面白くねえ」
その時チョンチョンと拍子木の音が、幕の背後《うしろ》から聞こえて
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