秘密だが、お前にだけ話すことにしよう。この前の参覲交替の節、俺も殿のお供をして、江戸へ参ったことがある。するとある日帯刀様から、使いが来て招かれた」
「ははあ、さようでございますか」
「で早速|伺候《しこう》した」
「面白いお話でもございましたかな?」
「ところが一人相客がいた」
「ははあどなたでございましたな?」
「江戸の有名な蘭学医、お前も名ぐらいは知っていよう、大槻玄卿という人物だ」
一一
「はい、よく名前は承知しております」
「帯刀様のご様子を見ると、大分《だいぶ》玄卿とはご懇意らしい。だがマアそれはよいとして、さてその時の話だが、物騒な方面へ及んだものさ。と云うのは他《ほか》でもない、毒薬の話に花が咲いたのさ。どんな毒薬で人を殺したら、後に痕跡《きずあと》が残らないかなどとな」
「なるほど、これは物騒で」
「で俺はいい加減にして、お暇《いとま》をして帰ったが、いい気持ちはしなかったよ」北山はしばらく黙ったが、「俺の云うお家騒動の意味、どうだこれでも解らないかな」
「ハイ、どうやら朧気《おぼろげ》ながらも解ったようでございます」一学は初めて頷いた。
「で俺
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