います」自信ありげに清左衛門は云った。
「ナニ、妖気? これは不思議!」
「まことに不思議でございます」
「しかし私《わし》にはそうは見えぬが。……」
「しかし、確かでございます」
「どういう点が疑わしいな?」
「これは感覚でございます。そこを指しては申されません」
駿河守は首|傾《かし》げたが、「どうも私《わし》には信じられぬ」
「やがてお解りになりましょう」
五
殺人の本人、葉之助へその捕り方を命じたのは、笑うべき皮肉と云わざるを得ない。
辻斬りが絶えないばかりでなく反対にその数の増したのは当然過ぎるほど当然である。
こうして真の恐怖時代、こうして真の無警察時代が高遠城下へ招来された。
冬の夜空の月凍って、ビョービョーと吠える犬の声さえ陰に聞こえる深夜の町を、捕り方と称する殺人鬼が影のように通って行く! おお人々よ気を付けたがよい。その美しい容貌に、その優雅な姿態《すがたかたち》に、またその静かな歩き方に! 彼は人ではないのだから! 彼は呪われたる血吸鬼《バンプ》なのだから!
しんしんと雪が降って来た。四辺《あたり》朦朧《もうろう》と霧立ちこめ、一
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