粛々《しゅくしゅく》と城下を見廻っていた。
 円道寺の辻まで来た時であったが、隊士の一人が「あっ」と叫んだ。素破《すわ》とばかりに振り返って見ると、白井誠三郎が袈裟に斬られ朱に染まって斃《たお》れていた。そうして彼のすぐ背後に鏡葉之助が腕を拱《こまぬ》き黙然として立っていた。
 誰がどこから現われ出て、どうして誠三郎を斬ったものか、皆暮《かいく》れ知ることが出来なかった。
 こうしてせっかくの夜警隊も解散せざるを得なかった。
 心配したのは駿河守である。例によって葉之助を召した。
「さて葉之助、また依頼《たのみ》だ。そちも承知の辻斬り騒ぎ、とんと曲者《くせもの》の目星がつかぬ。ついてはその方市中を見廻り、是非とも曲者を捕えるよう」
「は」と云ったが葉之助は、苦笑せざるを得なかった。
「この事件ばかりは私の手には、ちと合《あ》い兼ねるかと存ぜられます」
「それは何故かな? 何故手に合わぬ」
「別に理由《わけ》とてはございませぬが、ちと相手が強過ぎますようで……」
「いやいやお前なら大丈夫だ」
「しかし、なにとぞ、他のお方へ……」
「ならぬならぬ、そちに限る」
 そこで止むを得ず葉之助は、
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