、死に瀕した窶《やつ》れた顔、額の色は藍《あい》のように蒼《あお》く唇の色は土気を含み、昏々として眠っている。
 老婆は口をカッと開けたがホーッ、ホーッ、ホーッ、ホーッと、頼正公の顔の辺へ息をしきりに吹きかける。そのつど頼正は身悶《みもだ》えする。
 じっ[#「じっ」に傍点]と見定めた葉之助は、几帳をパッと蹴退《けの》けるや、ヒラリと内へ躍り込んだ。
 ピタリと槍を構えたものである。
 さすがに老婆も驚いたが、抱いていた頼正を投げ出すと、スックとばかり立ち上がつた。身の長《たけ》天井へ届くと見えたが、これはもちろん錯覚である。
 二人は眼と眼を見合わせた。
「小僧推参!」
 と忍び音《ね》に、久田の姥《うば》は詈ったが、右手に振り袖をクルクルと巻くと高く頭上へ差し上げた。すなわち彼女の慣用手段、眠りを誘う催眠秘術、キリキリキリキリと廻し出す。
 あわやまたもや葉之助は、恐ろしい係蹄《わな》へ落ちようとする。
 と、奇蹟が現われた。
 平安朝型の長槍が、すなわち窩人の守護本尊宗介天狗の木像から借り受けて来た長槍が、葉之助の意志に関係《かかわり》なく自ずとグルグル廻り出した事で、頭上に翳《
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