、颯《さっ》と翻《かえ》った石突きが二番目の水狐族の咽喉《のど》を刺す。ムーと云ってこれも倒れる。敵ありと知った後の二人が、踵を返して逃げようとするのを追い縋《すが》って横撲り、一人の両足を払って置いて、倒れるのを飛び越すと、最後の一人を背中から田楽刺しに貫いた。
眼にも止まらぬ早業である。声一つ敵に立てさせない。
ブルッと血顫《ちぶる》いした葉之助、そのまま前庭を突っ切ると、正面に立っている古代造り、久田の姥の住む館へ、飛燕《ひえん》のように飛び込んで行った。
階段を上がると廻廊で、突き当たりは杉の大戸、手を掛けて引き開けると灯火のない闇の部屋、そこを通って奥へ行く。と、一つの部屋を隔てて仄《ほの》かに灯影が射して来た。
窺い寄った葉之助、立ててある几帳の垂《た》れ布《ぎぬ》の隙から、内の様子を覗いて見たが、思わずゾッと総毛立った。
艶《あでや》かな色の大振り袖、燃え立つばかりの緋の扱帯《しごき》、刺繍《ぬい》をちりばめた錦の帯、姿は妖嬌たる娘ではあるが頭を見れば銀の白髪、顔を見れば縦横の皺《しわ》、百歳過ぎた古老婆が、一人の武士を抱き介《かか》えている。他ならぬ若殿頼正で
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