の家へ引き寄せられ、美しい娘の水藻《みずも》に化けた百歳の姥《おうな》久田のために誑《たぶら》かされているらしい。しかも若殿頼正の生命《いのち》は寸刻に逼《せま》っているらしい。棺! 棺! 水葬礼! 彼らは頼正の死骸を棺の中へぶち[#「ぶち」に傍点]込んでそれを湖水へ沈めるのらしい。それが目前に逼っている!
「これはこうしてはいられない」
葉之助は足擦りした。とたんにガチャンと音がした。彼は何物かに躓《つまず》いたのである。ハッと思ったが遅かった。棺造りの水狐族が四人同時に立ち上がり、ムラムラとこっちへ走って来る。
「もうこうなれば仕方がない。一人残らず討ち取ってやろう」
突嗟に思案した葉之助は、そこに立っていた杉の古木の驚くばかり太い幹へピッタリ体をくっ付けた。
それとも知らず水狐族は四人|塊《かた》まって走って来る。
二八
眼前三尺に逼った時、葉之助の手はツト延びた。真っ先に進んだ水狐族の胸の真ん中を裏掻《うらか》くばかり、平安朝型の長槍が、電光のように貫いた。ムーと云うとぶっ[#「ぶっ」に傍点]倒れると、もう槍は手もとへ引かれ、引かれたと思う隙もなく
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