落の人間を相手としては、いかほど武道に達した者でも、討ち果たすことは困難《むずかし》かろう。これは充分考えずばなるまい。……いや待てよ、そうでもない。彼らの長さえ討ち取ったなら、諏訪家に纏《まつ》わる禍《わざわ》いだけは断ち切ることが出来ようも知れぬ。うむ、そうだ、この一点へ、ひとつ心を集めて見よう」
森閑と更けた城内の夜、別館客座敷の真ん中に坐り葉之助はじっと考え込んだが、
「考えていても仕方がない。味方を知り敵を知るは必勝の法と兵学にもある。これから窃《こっそ》り出かけて行き、水狐部落の様子を見よう」
スッと立って廻廊へ出、雨戸を開けると庭へ出た。城の裏門までやって来ると一人の番人が立っていた。
「どなたでござるな? どこへおいでなさる?」
「拙者は内藤家より使者の者、所用あって城下へ出ます。早々小門をお開けくださるよう」
「はっ」と云って式体《しきたい》したが、「たとえいかなるご仁《じん》に致せ、刻限過ぎにござりますれば開門いたすことなりませぬ」
「ほほう、いかなる人といえども刻限過ぎにはこの小門を通行致すことなりませぬとな」
「諏訪家の掟《おきて》にござります」
「しかるに
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