ちは死なしはせぬ。何故そのように死にたいぞ?」
「憐れな身の上でございますゆえ……」
「この頼正がある限りはお前は不幸に沈ませては置かぬ。それともそちは私《わし》が嫌いか?」
 云い云い肩へ手を置いた。水藻はそれを避けようともしない。堅く身を縮めるばかりである。
「返辞のないは厭《いや》と見える」
 水藻《みずも》は無言で首を振る。
「それともそちは恥ずかしいか?」
 乙女は黙って頷いた。
「まだそちは死にたいか?」
「死ぬのが厭になりました」
「楽しく二人で生きようではないか」
 水藻は袖から顔を上げたが涙に濡れた星のような眼が、この時かすかに微笑《ほほえ》んだ。
「おお笑ったな。そうなくてはならぬ。私《わし》も寂しい身の上だ。不足のない身分ながら、いつも寂しく日を送って来た。だがこれからは慰められよう。私は事業を恋と換えた。恋の美酒《うまざけ》に酔い痴《し》れよう。ほんとに男と云うものは、身も魂も何物かに打ち込まなければ生き甲斐《がい》がない。私はこれまで荒々しい武道と事業とで生きて来た。それがいよいよ行き詰まったところで計らずも女の恋を得た。これで楽しく生きることが出来る。お前は
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